労務管理コラム

社会保険とは? 今さら聞けない基礎知識や加入条件から最新の法改正までわかりやすく解説

2024.08.01

社会保険とは? 今さら聞けない基礎知識や加入条件から最新の法改正までわかりやすく解説

、社会保険とは、国が運営する公的な保険制度であり、病気やケガ、老後の生活、失業など、個人では対処が難しいリスクに対して、社会全体で支え合うことで、安定した生活を維持することを目的としています。「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの制度で社会保険は構成されており、保険料は事業主や従業員から徴収され、給付などによって被保険者の生活を保障をします。

社会保険の保険料は主に毎月の給与から控除がされるため、給与計算に大きく関わってきます。手続きの誤りや制度に対しての理解不足は給与計算の誤りに繋がることが多く、なによりも従業員の方が必要な保障を受けられないといった事態は会社と従業員の方の信頼関係を損ねかねません。

今回はそんな今さら聞けない社会保険の基礎知識を最新の情報を交えながら解説していきます。

社会保険の基礎知識

社会保険とは何か?

先述したとおり、社会保険は公的な保険制度で、健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5つの制度から成り立っており、それぞれが異なるリスクに対応しています。

一般的に社会保険というとこの5つのうちの健康保険、介護保険、厚生年金保険を指すことが多く、残りの労災保険と雇用保険を労働保険と呼ぶことが多いです。今回のコラムでは健康保険、厚生年金保険、介護保険をまとめて社会保険として解説をしていきます。

社会保険の種類
社会保険労働保険 
健康保険 :医療費の負担軽減など
介護保険 :介護費用の負担軽減など
厚生年金保険:老後の年金など
労災保険 :業務に関わる負傷等への補償など
雇用保険:失業時の生活を支えるための給付など

健康保険の役割

健康保険は、最も身近な社会保険です。病院で治療を受けた際に保険証を提示することで治療費の一部のみの負担で済むのは健康保険に加入をしているからです。また健康保険は、病気やけがの際に医療費の負担を軽減するだけでなく、出産手当金や傷病手当金など、働けない時の生活を支える給付もあります。また、扶養家族がいる場合は、条件を満たすことで家族も健康保険の対象となり、同様の医療費軽減が受けられます。

介護保険の役割

介護保険は、高齢者や要介護状態になった際に必要な介護サービスを受けるための制度です。40歳以上の国民が加入し、介護が必要になった際に特定のサービスを受けられるよう支援します。これにより、介護が必要な高齢者やその家族の経済的負担を軽減し、安心して介護サービスを利用できる環境を整えることを目的としています。

厚生年金保険の役割

厚生年金保険の役割は、老後の生活を支えるための年金を提供することです。加入者は、一定の年齢に達した時点で、これまで支払ってきた保険料に応じた年金を受け取ることができます。これにより、現役を退いた後も安定した収入を得られるため、老後の生活設計に重要な役割を果たします。また、障害年金や遺族年金といった保障も備わっており、万が一の際にも備えられる制度です。

国民健康保険との違い

健康保険と似ている制度として、「国民健康保険」があります。社会保険の健康保険との違いは、主に加入対象と保険料の負担の仕方が異なります。社会保険は主に企業に勤める従業員の方が主な対象で、保険料は企業と従業員を折半します。一方で、国民健康保険は自営業者や非正規雇用者が主な対象で、保険料は個人の収入や資産に基づいて計算されます。

労働保険との違い

先ほども説明したとおり、労働保険とは労災保険と雇用保険の2つを指す名称です。労災保険は仕事中の事故や病気に対する補償を提供し、雇用保険は失業時の生活を支えるための給付を行います。社会保険と労働保険は、それぞれ異なる目的を持ち、補完し合うことで多角的な社会保障を実現しています。

社会保険に加入するメリットとデメリット

加入するメリット

社会保険に加入することには多くのメリットがあります。まず、健康保険に加入することで、病気やけがをした際に医療費の一部を負担してもらえるため、自己負担が軽減されます。また、健康診断や予防接種といった健康管理サービスを受けることができ、健康維持に役立ちます。次に、厚生年金に加入することで、将来の年金受給額が増加する可能性があります。これは、老後の生活を安定させるために非常に重要です。さらに、介護保険により、将来的に介護が必要になった場合に備えて、必要なサービスを受けることができます。失業保険や労災保険も、失業や労働災害時に経済的な支えとなり、安心感を得られます。これらの保険は、個人の経済的リスクを分散し、安心して働く環境を提供します。

加入するデメリット

加入による大きなデメリットはありません。強いて挙げるとすれば社会保険料の支払いによる給与の手取り額が減ることでしょうか。しかし社会保険料を負担することで保障が受けられることを鑑みればデメリットと断じてしまうことはできないと考えます。特に、収入が低い場合や家計に余裕がない場合には、負担が大きく感じられることがあるかもしれませんが、将来の生活の安定に繋がるものであることにも変わりありません。

また、労務を担当する方からすると、加入条件の確認や加入の手続きが負担になることはデメリットと言えるかもしれません。特にパートやアルバイトで働く人々にとっては、加入条件がわかりにくい場合があり、さらに社会保険の制度が法改正により頻繁に変わることも、労務担当の方の負担を大きくしている点です。労務担当者は最新の情報を常に確認しなければならず、無関心でいると従業員が不利益を被る可能性があります。こうしたデメリットを理解し、適切に対応することが重要です。

弊社コラムでは、社会保険に関して最新の法改正情報を定期的に紹介しておりますので、こまめにご確認いただき知識のアップデートの一助としてください。


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事業所の社会保険の加入条件

強制適用事業所とは

次に社会保険の加入条件について確認をしていきます。ますは事業所の社会保険の加入条件についてですが、社会保険に加入するにあたって、事業所は強制適用事業所任意適用事業所に分けられます。強制適用事業所とは、法律に基づき、一定の条件を満たす場合に社会保険への加入が義務付けられている事業所のことを指します。通常、従業員数が一定以上の法人事業所や、常時雇用される従業員がいる個人事業所がこれに該当します。具体的には、商業、工業、サービス業など、業種を問わず、法人である場合や、個人事業所であっても従業員が5人以上いる場合などが基本的な基準となります。

任意適用事業所とは

一方で強制適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることで適用事業所となることができます。このような事業所を任意適用事業所と言います。社会保険に加入することで、従業員の福利厚生の充実を図ることができ、優秀な人材の確保や定着に寄与する可能性がありますが、事業所も従業員も社会保険料を負担することになるので、そのメリットとデメリットを十分に理解し、合意の上で手続きを行うことが重要です。

従業員の社会保険の加入条件

正社員の加入条件

次に従業員側の加入条件を確認していきます。社会保険は、事業所の種類や従業員の雇用形態によって加入条件が異なります。正社員の加入条件と見出しではありますが、正確に言えば「フルタイムで働く従業員及び週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員」であれば社会保険への加入が義務となります。正社員であるか否かは関係なく、あくまで労働時間によって決まりますのでご注意ください。

社会保険の加入条件
  • フルタイムで働く従業員及び週所定労働時間
  • 月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員

アルバイトやパートの加入条件

一方、アルバイトやパートの従業員の場合、事業所の従業員数によって加入条件が異なります。従業員が51人以上の事業所では、以下の条件にすべてあてはまる場合は社会保険への加入が義務付けられています。下記の条件が適用される事業所の範囲は2016年より段階的に拡大していき、2024年10月で51人以上のすべての事業所が対象となりました。

短時間労働者の社保の加入条件(従業員が51人以上の事業所)
  • 週の労働時間が20時間以上 
  • 賃金が月額88,000円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生でない

2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大

先述したとおり2024年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されました。元々はフルタイムまたはそれに近い働き方の従業員しか加入できなかった社会保険の加入条件に上記の条件が追加されたのが2016年10月です。当時は従業員数501人以上の事業所が対象でしたが、この範囲が段階的に広がり、2024年10月には51人以上の事業所まで対象が広がりました。

従業員数が51人以上の集計の仕方

事業所規模の条件となっている従業員数は以下の従業員の合計です。従業員には、上記要件を満たす正社員や有期職員等だけでなく、パート・アルバイトも含みますのでご注意ください。

「フルタイムで働く従業員数」
「1週間の所定労働時間及び1月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員」

従業員が50人以下の事業所の場合

従業員が50人以下の事業所の場合、短時間労働者は社保に加入できないというわけではありません。従業員と企業等が合意することで、上記の短時間労働者の加入条件を適用することが可能です。

社会保険の扶養とは

被扶養者の範囲

社会保険の扶養とは、被保険者の家族が一定の条件を満たすことで、被保険者の健康保険に加入できる制度を指します。これにより、扶養に入る家族は個別に保険料を支払う必要がなくなり、医療費の負担が軽減されるなど経済的なメリットがあります。

被扶養者の範囲は、基本的に被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で、被保険者の収入によって生活をしている親族です。配偶者には事実上婚姻関係と同様の人も含まれます。また先述した親族以外の三親等以内の親族は被保険者と住居・家計を同じくしていることが条件で加入できます。

被扶養者の範囲
被保険者の収入によって生活をしている
直系尊属、配偶者(事実婚含む)、子、孫、兄弟姉妹
または
被保険者と住居・家計を同じくしている
三親等以内の親族

扶養にできる家族の収入条件

被保険者の扶養に入るためには、年間収入が一定の範囲内である必要があります。具体的には、被扶養者の年間収入が130万円未満であり、同居の場合は被保険者の年間収入の1/2未満(別居の場合は収入が被保険者からの仕送り額未満)であることが一般的な基準とされています。ただし、認定対象者が60歳以上の人や障害者の場合は180万円未満が基準となります。扶養に入れるかどうかは、これらの収入条件に基づいて判断されるため、事前にしっかりと確認することが大切です。扶養に関する手続きや条件に関しては、社会保険事務所や会社の人事担当者に相談するとよいでしょう。

扶養にできる家族の収入条件

年間収入が130万円未満
( 認定対象者が60歳以上の人や障害者の場合は180万円未満
かつ
同居の場合 被保険者の年間収入の1/2未満
別居の場合 被保険者からの仕送り額未満

社会保険の扶養に入るメリット・デメリット

社会保険の扶養に入るメリット

社会保険の扶養に入るメリットとしては、健康保険料や厚生年金保険料が扶養家族には課されないため、経済的な負担が増えることなく被保険者と同様の医療給付を受けることができます。そのため被扶養者が無職や低収入の場合であっても医療費の負担を減らすことが可能です。

社会保険の扶養に入るデメリット

社会保険の扶養に入るデメリットは特にないですが、強いて挙げるとすれば、被扶養者の年収が一定の額を超えると扶養から外れなければいけない点です。俗にいう「年収の壁」と言われるものの一つです。この壁を越さないように被扶養者が働く際には収入を管理しなければならず思うように働くことができないといった恐れがあります。また扶養に入ることで被扶養者自身の社会保険に加入する機会を逃し、将来的な年金の受給額に影響する可能性も考慮しなければなりません。

年収の壁とは

社会保険に関わる「壁」

年収の壁とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が増える境界のことを指します。この壁により、働き方や収入の調整を考える必要が出てくることがあります。

社会保険に関わる年収の「壁」
106万円の壁

106万円を超すと、51人以上の事業所に努めている場合、社会保険の加入が義務となる可能性が出てくる

130万の壁

130万円を超すと、社会保険上の扶養から外れてしまう

まず社会保険に関わる「壁」としては、106万円の壁があります。これは先ほど説明した短時間労働者の社保加入の条件に「賃金が月額88,000円以上」とあるため、88,000円の12か月分として年収が106万円を越した場合に、51人以上の事業所の場合は社会保険の加入が義務となる可能性が出てきます(もちろんその他の加入条件を満たしている必要はあります)。

次の壁は130万の壁です。先ほどの106万円の壁は年収以外の要件もあるため社会保険の加入条件を満たさない場合は引き続き扶養に入ることできますが、130万の壁を超すと扶養の加入できる収入の基準を越してしまうため、扶養から外れることとなり、自身が社会保険の被保険者とならなければなりません。そして健康保険や厚生年金の保険料を自身で負担しなければならず、結果として給与の手取り額が減ってしまうことがあります。

またこうした年収の壁は、会社によっては家族手当のような扶養に関する手当の支給基準となっていることもあります。

所得税に関わる「壁」

所得税に関わる年収の「壁」
103万の壁
103万円を超すと本人に所得税が課される。
150万の壁 

150万円を超すと配偶者特別控除の控除額が徐々に減額される。

201万の壁
201万円を超すと配偶者特別控除が受けられなくなる。

一方、所得税に関わる「壁」は、課税対象となる収入の境界を指します。年収が103万円を超えると所得税が課せられます。このため、年収を103万円以下に抑えることで、所得税を回避し、扶養控除の対象として家族の税負担を軽減することが可能です。さらに、年収が150万円を超えると、配偶者控除の額が減少し、201万を越すと配偶者控除による税控除が受けられなくなります。

社会保険の手続きの流れ

入社時(加入時)に関する手続きの必要な書類とポイント

社会保険の手続きの流れは、加入から脱退、扶養の追加、その他の手続きまで多岐にわたります。入社時には、まず「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出することが重要です。また、扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も必要です。扶養の追加にあたっては場合によっては家族関係や認定対象者の収入を証明する書類の提出が求められることがあります。さらに、「雇用保険被保険者資格取得届」も忘れずに提出しましょう。これらの書類は、入社後速やかに提出する必要があり、提出期限を過ぎると加入が遅れ、従業員の方が保険診療を受けられない恐れがあるため、注意が必要です。

入社時(加入時)の主な手続き
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届(扶養家族がいる場合)

退職時(脱退時)に関する手続きの必要な書類とポイント

退職時には、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。この手続きにより、社会保険の資格を喪失し、健康保険は退職日の翌日から利用できなくなります。そのため、退職した従業員は国民健康保険への切り替えや、配偶者の扶養に入れるかどうか確認する必要があります。雇用保険についても「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。雇用保険の喪失手続きとあわせて離職票が発行されるため、退職の際には離職票が必要かどうか確認をしておくとよいでしょう。なおその後の失業給付を受けるための手続きについては退職者自身が進める必要があります。退職時の手続きは、スムーズな保険の移行のために非常に重要です。

退職時(脱退時)の主な手続

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届 

扶養の追加に関する手続きの必要な書類とポイント

扶養の追加については入社時の説明の通り「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。認定する被扶養者の収入や家族関係を証明書が別途で求められることも多々あるので、あらかじめ健康保険組合に確認をしておくと手続きがスムーズに進みます。また被扶養者の収入が増えるなど扶養から外れる際も異動届は提出する必要があります。扶養の追加や削除といった家族情報の変更は定期的に確認ができる仕組みづくりが大切です。

その他の重要な手続き ~算定・月変とは~

算定基礎届と月額変更届は、社会保険料を決めるための重要な手続きです。社会保険料は毎年4月から6月の給与を基に決定します。この社会保険料の定時決定の際に提出する書類が「算定基礎届」です。

一方で短期間で大幅な給与変動があった場合、給与額と社会保険料の乖離を防ぐため、給与変動後の3か月間の給与を元に社会保険料が改定されます。この手続きが随時改定とよばれ、その際に提出する書類が「月額変更届」です。月額変更届は給与に大幅な変動があった場合に提出し、保険料の再計算を行います。これらの手続きを怠ると、適切な保険料が徴収されない可能性があるため、給与の変動があった場合は速やかに対応することが求められます。

マイナ保険証とは

これまでの保険証はどうなるの?

マイナ保険証とは、従来の健康保険証に代わり、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする制度です。2024年12月以降に健康保険に加入した被保険者は、これまでの保険証は発行されなくなり、マイナ保険証が本格的に運用されるようになります。

これまでの保険証は、マイナ保険証の導入によってその役割を終えますが、当面の間は移行期間として併用が可能です。またマイナンバーカードの健康保険証利用登録をしていない人には「資格確認書」が交付され、マイナ保険証の代わりとして医療機関で使用することができます。ただし、将来的にはマイナ保険証が標準となるため、早めの切り替えが推奨されています。

マイナ保険証を利用するための手続き

マイナ保険証を利用するための手続きは、まずマイナンバーカードを取得することから始まります。取得後、マイナポータルや専用アプリを通じて健康保険証利用の申し込みを行います。手続きはオンラインで完結するため、自宅からでも可能です。申し込み後にマイナ保険証としてマイナンバーカードが利用できるようになります。なお医療機関がマイナ保険証に対応していない場合は、事前に本人宛に配布されている「資格情報のお知らせ」とマイナンバーカードをあわせて提示することで保険診療を受けることができます。

社会保険に関するよくある質問

Q1 社会保険料は誰が負担する?

 A 労働者と事業主がそれぞれの割合で負担します

健康保険や介護保険、厚生年金保険、雇用保険の保険料は、労働者と事業主がそれぞれの割合で負担します。一方で労災保険については全額が事業主負担となっています。また先ほども説明しておりますが、健康保険で家族を扶養に追加した場合でも保険料に変わりはありません。

Q2 保険料はいつからいつまでかかる?

A 資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月まで社会保険はかかります。

社会保険料は、被保険者の資格を取得した月から、その資格を喪失した月の前月までの分について月単位でかかります。ここで注意をしなければいけないのは「資格を喪失した日」です。資格喪失の一番多くの理由は退職ですが、例えば3月31日に退職をした場合、資格喪失日は翌日の4月1日となります。そのため「資格を喪失した月の前月分」は3月分の社会保険料がかかることになります。一方で3月30日に退職をした場合、資格喪失日は翌日の3月31日となり、資格を喪失した月の前月が2月となるため、3月分の社会保険料はかかりません。

退職日と社会保険料
3月31日退職の場合 3月30日退職の場合 

資格喪失日→4月1日
3月の保険料まで支払う 

資格喪失日→3月31日
2月の保険料まで支払う 

Q3 退職後の社会保険の取り扱いはどうなるの?

A 新しい職場で新たに社会保険に加入する、新しい職場で新たに社会保険に加入する、国民健康保険に加入するといった選択肢が考えられます

退職後の社会保険の取り扱いについても重要です。退職日に社会保険の資格喪失手続きを行い、新しい職場で新たに社会保険に加入することとなります。また退職後に新しい職場が決まっていない場合などは、退職後の健康保険の任意継続制度を利用するか、国民健康保険に加入することが考えられます。ただし健康保険の任意継続の場合は保険料は被保険者本人が全額負担となり、継続期間も最大で2年と上限があります。

Q4 社会保険未加入の状態が続くとどうなる?

A 病気や怪我で働けなくなった場合の保障が受けられないなど様々なリスクが生じます。 

社会保険に未加入の状態が続くと、様々なリスクが生じます。例えば、病気や怪我で働けなくなった場合の保障が受けられないだけでなく、将来的な年金受給額が減少する可能性があります。また事業主側にもリスクはあります。本来であれば加入すべき従業員の手続きを忘れていたため未加入が発覚した場合、事業主は過去に遡って保険料を支払わなければならない恐れがあります。

Q5 賞与にも社会保険はかかるのか?

A 賞与にも社会保険料はかかります。 

賞与に対する保険料は、給与とは別に計算され、事業主と労働者の双方が負担します。このため、賞与が支給されるたびに、所定の割合で保険料が控除されることを理解しておく必要があります。

まとめ

 社会保険は従業員の方の生活に大きな影響を与える重要な制度です。まずは制度について正しく理解をして、適切な手続きができるようになりましょう。本文中でも紹介しておりますが、社会保険の制度は法改正によって変更がよく生じます。これまで正しかった知識が次の日から誤った知識となることはよくあります。常に最新の情報を手に入れるようにアンテナを広く張ることも肝要です。

神田 晃二郎

この記事を書いた人

神田 晃二郎

平成22年入社 中央大学卒 大学時代に、社会保険労務士資格を取得。学生時代から労働ゼミに参加。前職は事業会社にて労務セクションを担当。その後エスティワークスに参画。複数社の上場企業顧問をする特定社会保険労務士として活躍中。