労働法改正に関するコラム

2025年より始まる育児時短就業給付金の重要ポイント

公開日:2025.03.28

更新日:2025.03.31

2025年より始まる育児時短就業給付金の重要ポイント

2025年からスタートする育児時短就業給付金は、育児と仕事の両立に悩む多くの方にとって、待望の制度変更です。これまで育児休業中の収入減少や、育児休業によるキャリア形成の中断に不安を抱えていた方々に対する、新たな支援策として注目を集めています。

しかし、具体的な受給資格や申請手続きについては、まだ不明瞭な部分も多いのが実際のところで、この段階ではまずは制度の概要を理解することが重要です。

育児とキャリアの両立を目指す従業員も、そのサポートをしていく人事労務担当者も制度の概要を理解することで、安心して育児時短就業給付金を活用できるようこのコラムで、一緒に勉強していきましょう。

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育児時短就業給付金とは何か?

基本的な制度の概要と目的

 2025年4月1日より、育児休業給付金の一つとして「育児時短就業給付金」が創設されます。育児時短就業給付金は、育児と仕事の両立を支援するための制度です。

仕事と育児の両立支援の観点から、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、2歳に満たない子を養育するために時短勤務した場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低下するなどの要件を満たすときに支給する給付金です。

この制度は、特に育児休業を取得する際に収入が大きく減少することを防ぎ、働き続けたいという意欲を持つ親がキャリアを中断せずに済むように設計されています。育児時短就業給付金を受け取ることで、育児と仕事のバランスが取りやすくなり、家族全体の生活の質も向上することが期待されています。

新制度の導入背景

この制度は少子化対策の一環としても位置付けられており、育児負担の軽減を通じて出生率の向上を目指しています。働く親が安心して育児休業を取得できる環境を提供することは、企業にとっても優秀な人材の確保と定着につながるため、社会全体の持続可能な発展に寄与する重要な施策といえます。

育児時短就業給付金の特長

育児時短就業給付金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、大前提として受給者は2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する者である必要があります。

それに加え、育児休業を取得した後に、引き続き、通常の労働時間から短縮された勤務を行っていること、または、雇用保険の加入期間が一定の期間以上であることも必要です。

さらに、育児時短就業給付金は、育児休業を取得している期間中の収入減少を補うことを目的としているため、申請時に所得が一定の基準を下回っていることが求められます。

育児時短就業給付金の支給要件(受給資格)

それでは具体的な支給要件(受給資格)を見ていきましょう。

育児時短就業給付金は、次の要件を両方を満たす方が対象です。

育児時短就業給付金の支給要件
  1. 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること
  2. 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて(※)、育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月あること

※育児時短就業に係る子について育児休業給付の支給を受けていた場合であって、当該育児休業給付に係る育児休業期間の末日の翌日(復職日)から起算して、育児時短就業を開始した日の前日までの期間が14日以内のときをいいます。

育児時短就業給付金が支給される月とは

加えて、次の要件をすべて満たす月についてのみ支給されます。

育児時短就業給付金の支給要件
  1. 初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者である月
  2. 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  3. 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
  4. 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

育児時短就業給付金の支給額はいくらか

原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます。

ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計支給限度額を超える場合は、超えた部分が減額されます。

なお、次の場合、給付金は支給されません。

育児時短就業給付金の支給されないとき
  1. 支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業前の賃金水準と比べて低下していないとき
  2. 支給対象月に支払われた賃金額が支給限度額「459,000円(※1)」以上であるとき
  3. 支給額が最低限度額「2,295円(※2)」以下であるとき

上記(※)の金額は、2025年7月31日までは下記の通りとなっております。

尚、上記限度額は毎年8月1日に改定が予定されています。

育児時短就業給付金の支給対象期間

育児時短給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月(以下「支給対象月」という。)について支給します。

ただし、以下の日の属する月までが支給対象期間となります。

育児時短就業給付金は以下の日の属する月で終了
  1. 育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
  2. 産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
  3. 育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために、育児時短就業を開始した日の前月末日
  4. 子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日

育児時短就業給付金の申請手続きの流れ

申請手続きの流れとしては、まず勤務先の人事労務担当者に相談し、必要書類を準備することから始まります。受給資格の確認や、支給申請のタイミングなどで、必要な書類は変わってきますが、

  • 母子健康手帳
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • タイムカード
  • 労働条件通知書 等

などが求められます。これらの書類を揃えたら、ハローワークやオンライン申請システムを通じて申請を行います。申請後、審査が行われ、受給資格が確認されれば給付が開始されます。手続きには数週間かかることがあるため、早めに準備を進めることが望ましいです。

育児時短就業給付金に関する経過措置

2025年4月1日より前から2歳未満の子を養育するために育児時短就業に相当する時短就業を行っている場合は、2025年4月1日から育児時短就業を開始したものとみなして、要件や育児時短就業前の賃金水準を確認し、要件を満たす場合は、2025年4月1日以降の各月を支給対象月として支給が行われます。

この経過措置によって、2025年4月1日以前に育児時短就業を開始している従業員も、新制度の恩恵を受けやすくなっています。

育児時短就業給付金のメリットとデメリット

メリットの具体例

育児時短就業給付金の創設により、育児と仕事の両立を図りたいと考える多くの家庭が、より柔軟に働き方を選択できるようになります。ただし、確実に給付を受けるためには、適切な手続きが必要であり、事前に雇用主と詳細を確認することが重要です。また、経過措置の対象となる期間や条件については、個々の状況によって異なる場合があるため、正確な情報を得るために、専門家の相談を受けることをお勧めします。

新しく創設される育児時短就業給付金の制度は、育児と仕事を両立したいと考えるビジネスパーソンにとって選択に幅を広げてくれる大きなサポートになるはずです。労使ともにこの制度の理解を深め、適切に活用することが求められます。こうした取り組みにより、子育て世代が安心して働ける環境の整備が進み、少子化対策にも寄与することが期待されます。

考えられるデメリット

まず、単純に制度の複雑さが挙げられます。育児時短就業給付金を利用するためには、様々な手続きや条件をクリアする必要があり、これらを理解しきれないと、せっかくの給付金を受け取れない可能性があります。また、給付額が一定ではなく、収入に応じた計算が必要となるため、予想よりも少ない給付になるケースも考えられます。

このため、企業側の人事労務担当者は、従業員の申請補助や、時短による労働力調整について非常に煩雑な対応が必要となる可能性があります。

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エスティワークスは顧問社労士として、これまで300社以上のお客様の労務管理や規程整備に伴走してきました。

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参考URL

育児時短就業給付の内容と支給申請手続リーフレット (引用 厚生労働省)


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関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。