労働法改正に関するコラム

いよいよ、令和7年版育児介護休業法の改正第1回目が令和7年4月1日から施行となります。改めて改正法の見直しをしながら、厚生労働省によって新たに明確化した情報をご案内いたします。本コラムでは、令和7年4月1日施行分について「法定義務」と「努力義務」に分類し、労務管理の実務担当者が何をしなければならないのか?を簡潔にまとめていきますので自社の状況に照らしよくご確認していただければと思います。
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育児介護休業規程がある会社は以下の改正内容を規定の条文に盛り込み、社内周知のうえ就業規則変更届を付けて労働基準監督署に届け出る必要があります。
〈改正前〉 | 〈改正後〉 |
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【名称】 | 【名称】 |
【対象となる子の範囲】 | 【対象となる子の範囲】 |
【取得理由】 | 【取得理由】 |
労使協定で「継続雇用期間6か月未満の労働者」を除外することができなくなりました。
労使協定の該当条文を撤廃し、労使協定の再締結を行う必要があります。また、育児介護休業規程の該当箇所を削除する必要があります。
〈改正前〉 | 〈改正後〉 |
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継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する |
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小学校就学前の子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能になります。 |
現在、3歳未満に限定されていた所定外労働の制限(残業免除)の適用範囲、小学校就学前の子(6歳)まで拡大されることとなりましたので、育児介護休業規程に定められている制限年齢を修正し、社内周知のうえ就業規則変更届を付けて労働基準監督署に届け出る必要があります。
〈改正前〉 | 〈改正後〉 |
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3歳未満の子を養育する労働者 | 小学校就学前の子を養育する労働者 |
育児介護休業法では、原則として3歳未満の子を養育する労働者に対して、本人の希望に応じて短時間勤務(時短)制度を適用する義務がありますが、労使協定を締結することで一定の範囲の労働者からの申し出を拒むことが可能となっています。(ここでは便宜上、除外協定と呼びます。)
除外協定があり、かつ下表の3が定められいる会社は、「時短の代替措置」を取らなければなりません。
労使協定により時短から除外できる労働者 |
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今回の改正は、この代替措置に「テレワーク」が追加される、というものです。
〈改正前の代替措置〉 | 〈改正後の代替措置〉 |
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時短を適用せずに代替措置をとる場合は、育児介護休業規程に自社が選択した「代替措置」の具体的内容を明記する必要があります。
なお、そもそも労使協定にて「業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」を除外する旨を定めていない場合には、法改正の影響はなく、本項に関する対応事項はありません。
令和6年4月1日より、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられましたが、今回の改正により、この公表義務となる事業主の範囲が、従業員300人超の企業へと適用が拡大されます。
従業員が300人を超える企業は、取得率の公表準備をしておきましょう。開示対象となるのは男性育休です。
取得率=育児休業をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数
具体的な計算手順は以下のコラムに書いてありますので参考にしてください。
労使協定にて「継続雇用期間6か月未満の労働者」を除外することができなくなりました。
労使協定の該当条文を撤廃し、労使協定の再締結を行う必要があります。また、育児介護休業規程の該当箇所を削除する必要があります。
〈改正前〉 | 〈改正後〉 |
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継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する |
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介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下の1~4のいずれかの措置を講じなければなりません。
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導入しやすい措置としては2の相談窓口の設置になるかと思います。
相談窓口の設置を行った場合には、その窓口を従業員に周知する必要があります。育児介護休業規程のなかで窓口担当に関する情報を記載し、従業員に周知するのもよいかと思います。
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
周知事項 |
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個別周知・意向確認の方法 |
のいずれか |
労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。
情報提供期間 |
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情報提供事項 |
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情報提供の方法 |
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さて、ここからは努力義務となります。
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
テレワークを許可したり、テレワークに関するルールを定める場合には、育児介護休業規程やテレワーク規程等にルールを記載することが必要となります。
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
テレワークを許可したり、テレワークに関するルールを定める場合には、育児介護休業規程やテレワーク規程等にルールを記載することが必要となります。
以上、令和7年版育児介護休業法改正の第1弾となる4月分の改正ポイントについて実務レベルで何をすべきかまとめてまいりましたがいかがだったでしょうか?
今回の改正は、非常に複雑に入り組んでいるため労務担当者はしっかりと勉強しておく必要があります。特に年齢によりどの制度が適用されるのかについては、よく整理しておく必要があると思います。
エスティワークスは顧問社労士として、これまで300社以上のお客様の労務管理や規程整備に伴走してきました。
我々が培ってきた実務ノウハウと最新の研究成果をぜひご活用いただければ幸いです。
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この記事を書いた人
株式会社エスティワークス 代表・特定社会保険労務士
明治大学卒業後、上場メーカーにて勤務。 最前線において管理職(ライン課長、プロジェクトマネージャー等)を歴任し、現場のマネジメントにあたる。平成16年に社会保険労務士資格を取得。その後、独立して株式会社エスティワークスを設立。平成18年に新たに開始された特定社会保険労務士制度 第1期合格のうえ付記。中小企業を中心に社内規程の整備、労務管理のコンサルティングを行う。 また、IPO(上場)労務分野に強みを持ち、これまでに大手アパレルEC系ベンチャー、AIベンチャーなど日本を代表する30社以上のベンチャー企業のIPO(上場)支援実績がある。
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