労働法改正に関するコラム

育児介護休業法の改正第1回目が施行されます。(令和7年4月1日施行分)

公開日:2025.02.17

更新日:2025.02.21

育児介護休業法の改正第1回目が施行されます。(令和7年4月1日施行分)

いよいよ、令和7年版育児介護休業法の改正第1回目令和7年4月1日から施行となります。改めて改正法の見直しをしながら、厚生労働省によって新たに明確化した情報をご案内いたします。本コラムでは、令和7年4月1日施行分について「法定義務」「努力義務」に分類し、労務管理の実務担当者が何をしなければならないのか?を簡潔にまとめていきますので自社の状況に照らしよくご確認していただければと思います。

①子の看護休暇の見直し(法定義務)

  1. 子の看護休暇の対象者となる範囲が、小学校3年生の修了まで拡大します。
  2. また、これまで取得理由は「病気、けが、予防接種、健康診断」など主に医療的な看護に限定されていましたが、新たに「入園式、卒業式など学校の行事」などが対象として追加されました。
  3. 労使協定によって「勤続6か月未満の労働者を除外する仕組み」が廃止されます。

育児介護休業規程の「子の看護休暇」に関する条文を修正する

育児介護休業規程がある会社は以下の改正内容を規定の条文に盛り込み、社内周知のうえ就業規則変更届を付けて労働基準監督署に届け出る必要があります。

〈改正前〉

〈改正後〉

【名称】
子の看護休暇

【名称】
子の看護等休暇

【対象となる子の範囲】
小学校就学の始期に達するまで

【対象となる子の範囲】
小学校3年生修了まで

【取得理由】
病気、けが、予防接種、健康診断

【取得理由】
左記に加え、下記が追加
・感染症に伴う、学級閉鎖等
・入園(入学)式、卒業式

子の看護休暇の除外に関する規定を修正し、労使協定を再締結する

労使協定で「継続雇用期間6か月未満の労働者」を除外することができなくなりました。

労使協定の該当条文を撤廃し、労使協定の再締結を行う必要があります。また、育児介護休業規程の該当箇所を削除する必要があります。

〈改正前〉

〈改正後〉

継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する

継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する

②所定外労働の制限の対象拡大(法定義務)

小学校就学前の子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能になります。

育児介護休業規程の「所定外労働の制限」に関する条文を修正する

現在、3歳未満に限定されていた所定外労働の制限(残業免除)の適用範囲、小学校就学前の子(6歳)まで拡大されることとなりましたので、育児介護休業規程に定められている制限年齢を修正し、社内周知のうえ就業規則変更届を付けて労働基準監督署に届け出る必要があります。

〈改正前〉

〈改正後〉

3歳未満の子を養育する労働者

小学校就学前の子を養育する労働者

③短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加(法定義務)

短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置とは何か?

育児介護休業法では、原則として3歳未満の子を養育する労働者に対して、本人の希望に応じて短時間勤務(時短)制度を適用する義務がありますが、労使協定を締結することで一定の範囲の労働者からの申し出を拒むことが可能となっています。(ここでは便宜上、除外協定と呼びます。)

除外協定があり、かつ下表の3が定められいる会社は、「時短の代替措置」を取らなければなりません。

労使協定により時短から除外できる労働者
  1. 入社1年未満
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下
  3. 業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者(→代替措置が必要)

今回の改正は、この代替措置に「テレワーク」が追加される、というものです。

〈改正前の代替措置〉

〈改正後の代替措置〉

  • 育児休業に関する制度に準ずる措置
  •  始業時刻の変更等
  • 育児休業に関する制度に準ずる措置 
  • 始業時刻の変更等 
  • テレワーク(新規追加)

育児介護休業規程の「短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置」に関する条文を修正する

時短を適用せずに代替措置をとる場合は、育児介護休業規程に自社が選択した「代替措置」の具体的内容を明記する必要があります。

なお、そもそも労使協定にて「業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」を除外する旨を定めていない場合には、法改正の影響はなく、本項に関する対応事項はありません。

④育児休業取得状況の公表義務適用拡大(法定義務)

300人超の企業は育児休業取得状況の公表準備をする

令和6年4月1日より、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられましたが、今回の改正により、この公表義務となる事業主の範囲が、従業員300人超の企業へと適用が拡大されます。
従業員が300人を超える企業は、取得率の公表準備をしておきましょう。開示対象となるのは男性育休です。

取得率=育児休業をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数

具体的な計算手順は以下のコラムに書いてありますので参考にしてください。


育児介護休業法等の改正~令和6年5月改正~(令和7年4月1日から段階的に施行)

育児介護休業法等の改正~令和6年5月改正~(令和7年4月1日から段階的に施行)の詳細ページです。

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⑤介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(法定義務)

介護休暇の除外に関する規定を修正し、労使協定を再締結する

労使協定にて「継続雇用期間6か月未満の労働者」を除外することができなくなりました。

労使協定の該当条文を撤廃し、労使協定の再締結を行う必要があります。また、育児介護休業規程の該当箇所を削除する必要があります。

〈改正前〉

〈改正後〉

継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する

継続雇用期間6か月未満の労働者をは除外する

⑥介護離職防止のための雇用環境整備(法定義務)

育児介護休業規程に「介護両立支援の窓口担当」を記載し、従業員に周知する(例)

介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下の1~4のいずれかの措置を講じなければなりません。

  1. 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  2. 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

導入しやすい措置としては2の相談窓口の設置になるかと思います。
相談窓口の設置を行った場合には、その窓口を従業員に周知する必要があります。育児介護休業規程のなかで窓口担当に関する情報を記載し、従業員に周知するのもよいかと思います。

⑦介護に直面した労働者への個別の周知・意向確認等(法定義務)

労働者への周知資料の準備、窓口の設置

介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。

周知事項
  1. 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
  2. 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
  3. 介護休業給付金に関すること
個別周知・意向確認の方法
  1. 面談
  2. 個別周知・意向確認 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール等

のいずれか
注:1はオンライン面談も可能。3、4は労働者が希望した場合のみ

⑧介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供(法定義務)

労働者への周知資料の準備

労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。

情報提供期間
  1. 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)または
  2. 労働者が40歳に達した日の翌日(誕生日)から1年間
情報提供事項
  1. 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
  2. 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
  3. 介護休業給付金に関すること
情報提供の方法
  1. 面談(オンライン面談も可能)
  2. 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール等

さて、ここからは努力義務となります。

⑨育児(3歳未満)のためのテレワーク導入(努力義務)

必要に応じて育児介護休業規程でテレワークの選択を可能にする

3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
テレワークを許可したり、テレワークに関するルールを定める場合には、育児介護休業規程やテレワーク規程等にルールを記載することが必要となります。

⑩介護のためのテレワーク導入(努力義務)

育児介護休業規程の見直し

要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
テレワークを許可したり、テレワークに関するルールを定める場合には、育児介護休業規程やテレワーク規程等にルールを記載することが必要となります。

まとめ

以上、和7年版育児介護休業法改正の第1弾となる4月分の改正ポイントについて実務レベルで何をすべきかまとめてまいりましたがいかがだったでしょうか?

今回の改正は、非常に複雑に入り組んでいるため労務担当者はしっかりと勉強しておく必要があります。特に年齢によりどの制度が適用されるのかについては、よく整理しておく必要があると思います。

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参考URL

育児・介護休業等に関する規則の規定例 (引用 厚生労働省)

佐藤 貴則

この記事を書いた人

佐藤 貴則

株式会社エスティワークス 代表・特定社会保険労務士
明治大学卒業後、上場メーカーにて勤務。 最前線において管理職(ライン課長、プロジェクトマネージャー等)を歴任し、現場のマネジメントにあたる。平成16年に社会保険労務士資格を取得。その後、独立して株式会社エスティワークスを設立。平成18年に新たに開始された特定社会保険労務士制度 第1期合格のうえ付記。中小企業を中心に社内規程の整備、労務管理のコンサルティングを行う。 また、IPO(上場)労務分野に強みを持ち、これまでに大手アパレルEC系ベンチャー、AIベンチャーなど日本を代表する30社以上のベンチャー企業のIPO(上場)支援実績がある。