労働法改正情報

出生後休業支援給付金の創設(令和7年4月1日施行)

2025.01.23

出生後休業支援給付金の創設(令和7年4月1日施行)

雇用保険法の改正により、育児に伴う給付として、新たに「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が創設され、2025年4月1日に施行されます。
これらの制度は、仕事と育児の両立を図りやすくするため、育児休業や短時間勤務を取得する従業員に経済的な支援を提供するものです。
今回のコラムでは、「出生後休業支援給付金」について支給要件や対象者、企業としての対応のポイントについて解説します。

育児に関する給付金の概要

育児休業中の給付金としては「育児休業給付金」および「出生時育児休業給付金」が既存の制度として存在しています。この給付金はどちらも雇用保険の給付金のため、対象者となるのは雇用保険の被保険者となってきます。
今回の改正では、既存の2つの給付金に加えて新たに「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が創設されました。

雇用保険における育児に関わる給付金(「育児休業休業等給付」)
育児休業に関わる給付金

・育児休業給付金
・出生時育児休業給付金

【2025年4月より新設】
・出生後休業支援給付金 

出生直後の一定期間に14 日以上の育児休業を取得した場合に、「育児休業給付金」または「出生時育児休業給付金」と併せて、最大28日間支給される

時短勤務に関わる給付金

【2025年4月より新設】
・育児時短就業給付金

2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと支給される

2022年10月に開始した「出生時育児休業給付金」の手続きについては、下記コラムで紹介しているのであわせてご覧ください。


育児・介護休業法~出生時育児休業(産後パパ育休)給付金の支給申請手続き~(令和4年10月1日施行)

育児・介護休業法~出生時育児休業(産後パパ育休)給付金の支給申請手続き~(令和4年10月1日施行)の詳細ページです。

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出生後休業支援給付金とは

今回、新設される「出生後休業支援給付金」は、出生直後の一定期間に14 日以上の育児休業を取得した場合に、既存の「育児休業給付金」または「出生時育児休業給付金」と併せて、最大28日間支給される給付金です。厚生労働省から公開されたリーフレットに基づいて、支給要件や支給額について解説していきます。

育児時短就業給付金とは

2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと「育児時短就業給付金」の支給を受けることができます。まだ厚生労働省からは詳細な案内が出ていないため、こちらは情報が公開されましたら改めてコラムで紹介いたします。

出生後休業支援給付金の支給要件

雇用保険の被保険者が、次の要件①および②の要件を満たした場合に、「出生後休業支援給付金」が支給されます。

要件①    被保険者が、対象期間に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14 日以上取得したこと。

要件②    被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと、または、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当していること

次にそれぞれの要件を細かく見ていきましょう。

要件① 被保険者自身が育児休業を取得している

雇用保険の被保険者自身が以下の要件を満たしている必要があります。

被保険者が、対象期間に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14 日以上取得したこと

対象期間とは

被保険者が産後休業を取得しているかいないかで以下の通りになります。厚生労働省のパンフレットに掲載されている具体例とあわせてご確認ください。

<被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親、または、養子の場合)> 

子の出生日または出産予定日のうち早い日
から 
子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日
までの期間

「育児休業等給付の内容と 支給申請手続  令和7年1月1日改訂版」(厚生労働省)より抜粋

<被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親かつ養子でない場合)> 

子の出生日または出産予定日のうち早い日
から 
子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日 
までの期間

「育児休業等給付の内容と 支給申請手続  令和7年1月1日改訂版」(厚生労働省)より抜粋

2025年4月1日より前から育休を取得している場合

2025年4月1日以前より育児休業を取得している方についても支給の対象となりますが、対象期間について以下のように読み替えて支給要件について判断します。

<被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親、または、養子の場合)> 

「2025年4月1日」
から 
子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日
までの期間

<被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親かつ養子でない場合)> 

「2025年4月1日」
から 
子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日 
までの期間

要件② 被保険者の配偶者が育児休業を取得している

給付金を申請する被保険者の配偶者についての育児休業を取得している必要があります。具体的には以下が要件となります。

配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと

配偶者の育児休業を要件としない場合

出生後休業支援給付金は原則、父親・母親ともに(出生時)育児休業を取得していることが要件となります。ただし、子の出生日の翌日において、次の1~7のいずれかに該当する場合は、配偶者の育児休業が必要要件となりません。なお被保険者が父親の場合は、子が養子でない限り、必ずいずれかの事由(主に4,5,6のいずれか)に該当することとなりますので、母親の育児休業取得の有無は要件になりません。

配偶者の育児休業を要件としない場合
  1. 配偶者がいない
    (配偶者が行方不明の場合も含みます。ただし、配偶者が勤務先において3か月以上無断欠勤が続いている場合または災害により行方不明となっている場合に限ります。)
  2. 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
  3. 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
  4. 配偶者が無業者
  5. 配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない 
  6. 配偶者が産後休業中
  7. 1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
    ※配偶者が日々雇用される者など育児休業をすることができない場合や、育児休業をしても給付金が支給されない場合(育児休業給付の受給資格がない場合など)が該当します。なお、単に配偶者の業務の都合により育児休業を取得しない場合等は含みません。

出生後休業支援給付金の支給額

給付金の支給額については以下の計算式で計算がされます。

支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(最大28日)×13% 

休業開始時賃金日額は、同一の子について最初の出生時育児休業または育児休業の開始前直近6か月間に支払われた賃金の総額を180 で割った額となります。
休業期間の日数は、要件①の対象期間における出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業の取得日数であり、28日が上限となります。
なお、就労状況・賃金支払状況により出生時育児休業給付金または育児休業給付金が不支給となった場合は、出生後休業支援給付金の支給は行なわれません。

支給額のイメージは下記の通りです。







リーフレット「出生後休業支援給付金」(厚生労働省)より抜粋

出生後休業支援給付金の申請手続き

出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、同一の支給申請書を用いて行うこととなります。
なお、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の申請後に、出生後休業支援給付金の支給申請を別途行うことも可能ですが、その場合は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給された後に申請を行う必要があります。

支給申請書の記載事項

出生後休業支援給付金の支給要件を満たす場合は、支給申請書にある次の①~③の項目のいずれか一つを記入します(複数記載は不可となります。)

「配偶者の被保険者番号」欄 
配偶者が雇用保険被保険者であって、支給要件②に記載された配偶者の育休の取得日数を満たす場合は、「配偶者の被保険者番号」欄を記入します。
ハローワークにおいて、記入された配偶者の被保険者番号における(出生時)育児休業給付金の支給日数が要件を満たしているかの確認が行われます。そのため配偶者の(出生時)育児休業給付金が支給された後に申請を行う必要があります。
被保険者が父親の場合は、養子でない限りこの欄を記入することはなく、「配偶者の状態」欄を記載します。

「配偶者の育児休業開始年月日」欄
 配偶者が公務員(雇用保険被保険者である場合を除く)の場合、「配偶者の育児休業開始年月日」欄を記入します。この場合、育児休業の承認を行った任命権者からの通知書の写しや共済組合からの給付金の支給決定通知書の写しなど配偶者が一定の期間に14 日以上の育児休業の取得していることが確認できる書類を添付する必要があります。
「配偶者の被保険者番号」欄と同様、被保険者が父親の場合は、養子でない限り、この欄を記入することはなく、「配偶者の状態」欄を記載することになります。

なお一定の期間とは、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間をいいます。

「配偶者の状態」欄 
子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当する場合は、「配偶者の状態」欄に該当する番号を記入します。この場合、配偶者の状態を確認できる書類を添付してください。「配偶者の状態」欄に該当する番号・確認書類は下記の通りです。

子の出生日の翌日における
配偶者の状態
番号確認書類

配偶者がいない

1

  • 戸籍謄(抄)本(抄本の場合は被保険者本人のもの)
    及び
    世帯全員について記載された住民票(続柄あり)の写し

または

  • 被保険者がひとり親を対象とした公的な制度を利用していることが確認できる書類
    (遺族基礎年金の国民年金証書、児童扶養手当の受給を証明する書類、母子家庭の母等に対する手当や助成制度等を受給していることが確認できる書類など、いずれか一つで可)

配偶者が行方不明
(配偶者が勤務先において3か月以上無断欠勤が続いている場合
または災害により行方不明となっている場合に限る)

1

  • 世帯全員について記載された住民票(続柄あり)の写し等、支給対象者の配偶者であることを確認できるもの

及び

  • 配偶者の勤務先において無断欠勤が3か月以上続いていることについて配偶者の事業主が証明したもの、または、罹災証明書

配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない

2

  • 戸籍謄(抄)本
    (抄本の場合は被保険者本人及び対象の子のもの。
    住民票において、被保険者の配偶者が世帯主となっており、
    対象の子との続柄が「夫の子」又は「妻の子」となっている場合は、住民票(続柄あり)の写しでも可)

配偶者から暴力を受け、別居中

3

  • 裁判所が発行する配偶者暴力防止法第10 条に基づく保護命令に係る書類の写し
  • 女性相談支援センター等が発行する配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(雇用保険用)
のいずれか

配偶者が無業者

4

  • 世帯全員について記載された住民票(続柄あり)の写し等、支給対象者の配偶者であることを確認できるもの

及び

  • 配偶者の直近の課税証明書
    (収入なしであることの確認のため)
    ※ 課税証明書に給与収入金額が記載されている場合は、事業主発行の退職証明書の写しなど子の出生日の翌日時点で退職していることがわかる書類が必要
    ※ 配偶者が基本手当を受給中であれば、配偶者の直近の課税証明書に代えて受給資格者証の写しを添付書類とすることができる

配偶者が自営業者や
フリーランスなど雇用される労働者でない

5

  •  世帯全員について記載された住民票(続柄あり)の写し等、支給対象者の配偶者であることを確認できるもの

及び

  • 配偶者の直近の課税証明書
    (所得の内訳の事業所得に金額が計上されており、給与収入金額が計上されていないことを確認するため)
    ※課税証明書に給与収入金額が記載されている場合は、給与収入金額が雇用される労働者としてのものであれば、事業主発行の退職証明書の写しなど子の出生日の翌日時点で退職していることがわかる書類が必要
    ※給与収入金額が労働者性のない役員の役員報酬である場合や、各種法律に基づく育児休業がない特別職の公務員の場合は、その身分を証明する書類(役員名簿の写しや、身分証の写しなど)が必要

配偶者が産後休業中

6

  • 母子健康手帳(出生届済証明のページ)
  • 医師の診断書(分娩(出産)予定日証明書)
  • 出産育児一時金等の支給決定通知書

のいずれか

上記以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない

7

  •  世帯全員について記載された住民票(続柄あり)の写し等、支給対象者の配偶者であることを確認できるもの
及び
  •  配偶者が育児休業をすることができないことの申告書及び申告書に記載された必要書類。

 番号7の「上記以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない」場合に必要書類となっている「配偶者が育児休業をすることができないことの申告書」については、以下のページで公開されているので、こちらもご確認ください。


育児休業等給付について

mhlw.go.jp

実務のポイント

出生後休業支援給付金は4月1日から開始されるため、1月後半~2月頃にお子様がお生まれになる従業員には給付の可能性があります。育児休業取得予定者には厚生労働省のパンフレット等をお渡しし、新たな給付金が創設されることを周知しましょう。

支給要件にどう当てはまるかにより添付する書類も異なりますので注意が必要です。

厚生労働省のパンフレット『育児休業給付の内容と支給申請手続(令和7年1月1日改訂版)』には要件確認のためのフローチャートがありますので、従業員と一緒に確認をし、どの書類を用意してもらうか、確認するようにしましょう。

まとめ

今回は出生後休業支援給付金について解説をしました。今回の給付金の新設は、従業員が安心して育児と向き合える環境を整えると同時に、働きやすい職場づくりを推進する絶好の機会です。「出生後休業支援給付金」は育児休業取得の促進に、「育児時短就業給付金」は育児期における短時間勤務を後押しする仕組みとして活用することで、従業員の働きやすさを向上させるだけでなく、離職率の低下や優秀な人材の定着といった、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与する可能性があります。
そのためにもまずは制度の理解を深めましょう。

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参考

「育児休業給付金について(厚生労働省)」

「育児休業等給付の内容と 支給申請手続  令和7年1月1日改訂版」(厚生労働省)

関㟢 悠平

この記事を書いた人

関㟢 悠平

平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。