労働法改正情報
【1】概要
裁量労働制の省令・告示の改正が行われ、令和6年4月1日に施行されます。
これに伴い、裁量労働制の導入・継続には従前とは異なる新たな手続きが必要となります。
【2】改正のポイント
専門業務型裁量労働制
①本人同意を得る・同意の撤回の手続きを定める |
---|
本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める必要があります。 (※企画業務型裁量労働制では、これらを労使委員会の決議に定めることがすでに義務付けられています) |
同意の撤回の手続と、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定に定める必要があります。 (※企画業務型裁量労働制では、同意に関する記録を保存することを労使委員会の決議に定めることがすでに義務付けられています) |
企画業務型裁量労働制
①同意の撤回の手続きを定める |
---|
同意の撤回の手続と、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使委員会の決議に定める必要があります。 |
②労使委員会に賃金・評価制度を説明する |
---|
対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対する説明に関する事項(説明を事前に行うことや説明項目など)を労使委員会の運営規程に定める必要があります。 |
対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める必要があります。 |
③労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う |
---|
制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)を労使委員会の運営規程に定める必要があります。 |
④労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する |
---|
労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定める必要があります。 |
⑤定期報告の頻度が変わります |
---|
定期報告の頻度について、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回になります。(現行は6か月以内ごとに1回) |
【3】労使協定・労使委員会の決議の変更点
上記の変更点のうち、労使協定・労使委員会の決議の変更点をまとめると、下記のようになります。
(下線が今回の制度改正による追加事項です)
専門業務型裁量労働制の労使協定
①制度の対象とする業務 |
企画業務型裁量労働制の労使委員会の決議
①制度の対象とする業務 ②対象労働者の範囲 ③労働時間としてみなす時間(みなし労働時間) ④対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置 ⑤対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置 ⑥制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること ⑦制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと ⑧制度の適用に関する同意の撤回の手続 ⑨対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと ⑩労使委員会の決議の有効期間 ⑪労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること |
【4】実務のポイント
現在裁量労働制を導入しており、令和6年4月以降も継続する場合、令和6年3月末までに労働基準監督署に、変更後の協定届・決議届の届出を行う必要がありますので、余裕をもって準備するようにしてください。
参考URL
この記事を書いた人
平成29年入社 早稲田大学卒 大学卒業後は、ブライダル関連の上場企業でサービス業に従事。その後、エスティワークスに参画し社会保険労務士の資格を取得。丁寧な業務遂行と持ち前のトーク力で多くのお客様の信頼を得ている。